移植
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当院における心臓移植後COVID-19診療の経験
塚本 泰正渡邉 琢也望月 宏樹米山 将太郎福嶌 五月藤田 知之瀨口 理
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2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s267_3

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抄録

2020年1月に日本でも確認された新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は依然収束の見通しがたっていない。移植患者は免疫抑制療法のためCOVID-19が重症化しやすいとされているが、我が国における心臓移植患者のCOVID-19の実態については明確なエビデンスに乏しい。今回我々は、当院で心臓移植を施行した症例におけるCOVID-19の実態を後方視的に解析したので、報告する。

【対象と方法】1999年5月から2021年12月までに国立循環器病研究センター(NCVC)で心臓移植を受け、外来通院中の142症例(術後経過期間 7.6±5.0年、男性 74%、小児4例を含む)のうち、2022年5月までにCOVID-19を発症した13例(男性11例、小児1例)を対象とし、発症時期、感染経路、重症度、治療内容について検討した。

【結果】移植から発症までの経過期間は3.8±2.8年であり、2021年8月をピークとするいわゆる第5波で3例、2022年2月がピークの第6波で10例が感染した。感染経路は7例が家族からで最多であった。中等症Ⅱの1例を除く全例が軽症であった。重症化のリスクを考慮し、定期検査入院前精査で偶然陽性が判明しその時点で症状軽快していた1例を除く全例で入院加療を行った。入院加療を行った成人11症例に抗体製剤を、8症例に経口抗ウイルス薬を投与した。中等症Ⅱとなった1例には酸素投与、デキサメタゾン、ヘパリンおよび抗菌薬投与を追加した。MMFが投与されていた5例を含め、全例で免疫抑制薬の大幅な変更を必要としなかった。全例で軽快し、死亡例は認めなかった。

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