2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s265_3
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は2019年に発生が初めて確認され、その後世界的な流行を引き起こしており、徐々にその流行は落ち着きつつあるもののいまだ完全な収束の兆しは見えていない。臓器移植後患者において、新型コロナウイルス感染症に伴う死亡リスクは一般集団と比較して約4.6倍とされており、予後不良である。2020年4月から2022年5月にかけて、当院および関連病院において腎移植後に新型コロナウイルス感染症をきたした17症例(男性11例、女性6例)について、文献を交えて報告する。平均年齢は53.8歳(37-73)、平均移植後年数は11.6年(0.6-27)、生体腎移植後が14例、献腎移植術後が3例、平均入院日数は18.3日(7-55)、転帰として2例が死亡、15例は治癒した。死亡の2例についてはいずれも細菌性肺炎の合併が死因となっていた。免疫抑制剤はTAC使用が12例、CYA使用が5例、MMF使用が6例、MIZ使用が6例、全症例でPLSが使用されていた。治療としては気管挿管が4例に施行され、経過観察が3例、中和抗体薬使用が7例、抗ウイルス薬使用が7例であった。免疫抑制剤の減量・中止が10例で行われ、7例については免疫抑制剤の減量・中止は要しなかった。新型コロナウイルス流行から2年が経過し、臓器移植患者における新型コロナウイルス感染症に対する治療方法は確立されつつある。しかし今後新たな変異株の出現の可能性もあり、集積される報告を元にアップデートされるエビデンスに則り治療にあたっていく必要がある。