移植
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本邦における膵・膵島移植の適応再考の必要性
穴澤 貴行伊藤 孝司長井 和之山根 佳江本 憲央出羽 彩秦 浩一郎藤倉 純二稲垣 暢也波多野 悦朗
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2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s205_1

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抄録

【緒言】膵島移植が一般的な治療オプションとして確立されたことで、欧米では膵臓移植と膵島移植の適応についての提言が出されている。一方、本邦では膵・膵島移植を選択する明確な適応についての見解は示されていない。本邦の現状をふまえた両移植の適応の再考の必要性について検討する。

【現状と展望】本邦では、インスリン依存糖尿病に対し移植医療を選択するにあたり、膵・膵島移植の適応を明確に分ける基準は腎機能低下の有無のみである。腎不全を伴う場合は膵腎同時移植が選択されるが、腎不全を伴わない症例では、患者希望あるいは担当医判断で膵臓移植か膵島移植かが選択される。自験例では、膵島移植では移植術に伴う周術期合併症はほぼ認めず高い安全性が確認されている。心血管系合併症や腸骨動脈高度石灰化症例にも安全に移植可能であり、高侵襲手術に対しリスクを有する症例は膵島移植を選択すべきと思われた。一方、移植前インスリン必要量の多い症例や高体重症例では、十分な臨床効果が得られにくい場合があることが膵島移植の課題であった。海外では、レシピエントの併存疾患、年齢およびBMIによって両移植の選択基準が提言され、膵島・腎同時移植も選択肢とされつつあることは注目すべき見解であった。

【結語】レシピエントの病状に対し適切な移植医療を提供するために、膵・膵島移植の適応基準を再考し、より明快な基準を構築することが望まれる。

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