移植
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「これでいいのか?移植医療者の働き方改革」腎移植医の立場から 心停止後臓器摘出に関わる移植医の勤務実態
石田 英樹岡田 克典江川 裕人
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2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s149_1

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抄録

心停止後の臓器移植は本邦では腎臓のみに限られるが、脳死下臓器摘出時の勤務実態調査と同様のアンケートを配布し、脳死下および心停止後における勤務実態などの相違を比較検討した。対象は日本移植学会の働き方改革委員会がアンケートを行った340名の学会員(医師)である。

脳死下臓器摘出ではスケジュール通りにタイムテーブルが動く場面が多く短時間にマネ-ジメントが終結する一方、死の終末期を迎え臓器摘出に至る心停止後臓器摘出の場合はさまざまな状況が想定されるため、臓器摘出までに至るマネ-ジメントの拘束時間も時に2日~3日以上かかる場合も少なくなかった。この一連のマネ-ジメントの後に摘出手術を続けて行う医師は全体の回答者の過半数をはるかに超えた。この傾向は脳死下摘出も心停止後摘出も同様であった。摘出を終えた後に移植や他の職務へ向かうインタ-バルについてのアンケートを行った。実際には約80%の医師が臓器摘出後に移植手術に入ったり他の業務を遂行したり休憩することなしに働き続けていた。臓器摘出にかかった拘束時間は交通時間も含め、脳死下での臓器摘出、および、心停止後の臓器摘出ともに12~24時間以内であった。心停止後の臓器摘出では予想外に心停止までの時間がかかり、2~3日ほど摘出に時間を要したケースも散見される。

マンパワー的にも数少ない移植外科医は臓器提供の情報があるかなり早期の段階から始動し、長時間にわたって過酷な労働を余儀なくされているようである。

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