移植
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肺メディカルコンサルタント介入の効果 制度導入10年後の現状と課題
星川 康芦刈 淳太郎松田 安史
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2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s299

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抄録

2020年末現在、本邦の肺移植実施数は計838件となり、2020年1年間の脳死肺移植は58件であった。一方、新規待機登録者数は肺移植実施数を遥かに上回り、2020年は173名であった。2021年5月末現在の累積登録者1,856名のうち35%が肺移植を受けたが、38%が待機中死亡している。ドナー肺不足は依然として深刻である。本邦では、マージナルドナー臓器を適切に評価・管理して積極的に移植に供することを目的に、2002年から心臓移植医をメディカルコンサルタント (MC) として1回目脳死判定後に提供病院に派遣する制度が運用され始めた。2006年からはMCが主治医に依頼し積極的な気管支鏡治療を開始し肺提供率、グラフト生着率が向上した。2011年2月からは肺移植医が肺MCとしてドナー肺評価・管理に従事している。この制度の効果を、前述の気管支鏡治療開始前のI期44例、開始後のII期64例、肺MC参入後2年間のIII期79例に群分けして解析した結果、肺提供率は61、72、75% (per donor)、51、65、68% (per lung, p=0.03)、移植肺機能不全によるグラフト機能廃絶は13.3、3.6、3.7% (per lung, p=0.04)であった。今回2020年6月から1年間に肺提供の承諾があった脳死ドナー63例を解析した結果、肺提供率はper donor 83%と極めて良好であった。最近はMC介入前から主治医による気管支鏡治療・腹臥位療法などのドナー肺管理がしばしばなされている。肺MC制度導入から約10年を経過した現状と課題について考察したい。

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