移植
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提供施設との連携により心機能改善を得られたマージナルドナー心臓移植の一例
羽田 佑渡邉 琢也瀨口 理岩永 光史米山 将太郎岩崎 陽一望月 宏樹下島 正也田所 直樹塚本 泰正福嶌 五月藤田 知之福嶌 教偉
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2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s205

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抄録

わが国では臓器提供が少なく、マージナルドナー(MD)からの心臓移植は避けられない。今回我々は、JOTのドナー情報では移植適応の可否が決定できず、摘出チームに先行して医師を派遣し、ドナー管理をして心機能を改善させ、移植後順調に退院した症例を経験した。症例は60歳代男性。拡張型心筋症による心不全に対し、至適薬物療法、カテーテルアブレーション、両心室ペーシング、僧帽弁置換術施行も強心薬依存状態。諸事情で植込み型補助人工心臓(iVAD)適応がなく、強心剤投与下で移植待機。待機2年後ドナー情報あり。ドナーは40歳代男性。原疾患は脳出血。心肺蘇生はないが、二次評価では心エコーで左室肥大、左室収縮能低下[駆出率(EF)38%]を認めた。しかし、症例の心不全は進行性で、iVAD適応がなく、待機順位は下位であり、ドナー年齢、基礎疾患から治療介入で心機能改善の可能性があると判断し、摘出チームに先行して循環器内科医を派遣。提供施設医師と連携しながらドナー管理を行い、心機能が正常化し、心臓移植を実施。移植1日目の左室拡張/収縮末期径 41/29 mm、EF 54%、5週目にはEF 65%まで改善し、移植7週目に退院。現在患者は移植後10週を経過し、拒絶反応もなく経過良好である。提供施設医師と連携し管理することで、よりマージナルなドナー心でも移植可能となることが示唆された。

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