安全教育学研究
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腸管出血性大腸菌(O157病原大腸菌感染症)の流行と予防について
櫻井 忠義
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2002 年 2 巻 1 号 p. 13-18

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抄録

1996年に発生したO157病原大腸菌による食中毒は1県に終わらず全国に感染拡大し,年間総数も9314人という数に上り,11人の死亡者を墨した。O157病原大腸菌の特徴は赤痢薗と同じベロ毒素を有し,腸管出血を起こすだけでなく,腸管より血中へ入ったこの毒素は溶血を起こして,溶血性尿毒症症候群を発症させ,極めて重篤な腎障害を起こし,死に至ることがある。成人では下痢程度で軽快すること多いので,保菌者として他の人に感染を起こす元となるだけでなく,子供では上記のように重篤に陥りやすいので,大人は下痢をしたときの対応に気をつけて,手洗い,調理法,調理用具,食材の保管など衛生,清潔に配慮すべきである。治療はニューキノロン系の抗生物質を4~5日間投与するが,壊れた菌より毒素が放出されるので,全身状況を見ながら慎重に対応する必要がある。
厚生省(現厚生労働省)ではその後,指定伝染病として法定伝染病と同じ措置をとり,鎮静化してきたようにみえるが,1997年,1998年にも多数発生し,対策が十分とはいえない状況にある。

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