携帯電話などのモバイル端末を利用したメールサービスやインターネットサービスは,もはや日常生活の一部となり,ユビキタス社会において不可欠なものとなりつつある.モバイル端末では,その小さな筐体に組込んだ画面上にあらゆる情報を表示するため,表示する文字の可読性がきわめて重要になっている.実際,文字は個々の表示デバイスにあわせて設計されているのが現状である.ところが,文字の完成度の評価は主観に頼らざるを得ず,莫大なコストを要する.そこで本稿では,文字の可読性を左右する4大要素である「中心・重心」,「部首バランス」,「ふところ」,「ストローク」について,特に,文字を設計する上でもっとも重要な「文字の重心」に注目し,評価実験を行うことによって主観評価と客観評価の相互関係を明らかにする.更に,独自開発した液晶デバイス向けフォント“LCFONT”の開発ツールに組込むことにより,主観による評価を補うことで文字の設計コストの削減を図る.