インクジェットでは吐出安定性が重要な性能であり,特にサーマルヘッドでは性能予測が困難であった.サーマルヘッドはインク媒体の一部を突沸させて吐出させる方式であるため,ヒーターへのインク成分の焦げ付きが課題となる.
ヒーターへの焦げ付き防止には,顔料粒子の表面電位を高めることが有効であるが,従来の測定法では粒子のブラウン運動の影響を排除できず,アニオン性顔料分散体に正荷電を持つ粒子が含まれている様な測定結果が得られ,測定結果と吐出耐久性にも一致が見られなかった.
これに対し我々は,新たに開発したゼータ電位分布の測定方法によって,ブラウン運動の影響を排除し,表面電位のみを反映したゼータ電位の測定を可能にした.また新指標ζ2%と吐出耐久性の間に,線形の関係があることを見出した.またζ2%の指標と吐出耐久性の関係性は古典的DLVO (Derjaguin-Landau-Verwey-Overbeek) 理論に基づいた解釈が可能であることを見出した.
本成果により,サーマルヘッド向け新規インクの開発並びに品質管理において,物性値測定のみで吐出耐久性を予測できる見通しを得た.