1998 年 19 巻 3 号 p. 148-155
本研究の目的は, 木材, 稲わら, バガスなどの植物性バイオマス中に含まれるリグニンからリグニンエポキシ樹脂を合成する方法を開発することである。物理化学的前処理である水蒸気爆砕が植物性バイオマス中のリグニンの分離のために用いられた。カラマツ (Larix leptolepis) の木材チップが水蒸気圧力と蒸煮時間のような種々の爆砕条件の下で処理された。爆砕カラマツは水可溶性成分, セルロースと低分子物質の混合物, メタノール可溶性リグニン, Klasonリグニンに分離された。メタノール可溶性リグニンの特性がIRスペクトル, 分子量, メトキシル基とフェノール性水酸基の測定によって明らかにされた。水蒸気圧力3.6MPa, 蒸煮時間5minの爆砕カラマツから抽出されたメタノール可溶性リグニンはリグニンエポキシ樹脂の合成のために最も適した原料であった。メタノール可溶性リグニンはエポキシ化反応によって優れた熱硬化性樹脂に変換され, エポキシ化リグニンは市販のビスフェノールA系樹脂よりも速く硬化した。