2018 年 39 巻 6 号 p. 260-266
一つの芳香環に複数のOH 基を有する多官能フェノールである2-methylresorcinol(2mr)およびpyrogallol(py)を酸性条件下においてリグニンと反応させることにより,フェノール化リグニン2mr-L およびpy-L を合成した。これらのフェノール化リグニンを硬化剤,1-cyanoethyl-2-ethyl-4-methylimidazole(2E4MZ-CN)を硬化促進剤として用いてビスフェノールA 型エポキシ樹脂(DGEBA)の硬化を行うことにより,硬化物(BA/2mr-L およびBA/py-L)を得た。これらの硬化物のガラス転移温度(Tg)は未改質リグニンを硬化剤として用いた硬化物(BA/L)と比較して向上し,特にBA/py-L ではBA/L と比較して79 ℃高い218 ℃であった。動的粘弾性測定の結果より,BA/2mr-L およびBA/py-L におけるTg の向上は硬化物の架橋密度の上昇に由来することが示唆され,リグニンへの多官能フェノール導入の効果が確認された。また,BA/2mr-L およびBA/py-L では熱重量分析(TGA)における800 ℃での残渣が30%以上となっており,難燃性の向上も示唆された。