都市計画論文集
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地域固有の土地所有慣行のある青ノリ養殖業の持続に向けた生産方法とその背景
福島県相馬市松川浦における東日本大震災前後の比較を通して
村井 遥後藤 春彦森田 椋也山崎 義人泉川 時
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2021 年 56 巻 3 号 p. 727-734

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抄録

様々な地域課題を抱える今日の農山漁村では、自然災害が社会の変化を加速させ、地域課題がさらに深刻化する。本研究では、東日本大震災で被害を受けた、福島県相馬市の潟湖・松川浦における生業として青ノリ養殖業に着目する。松川浦には地域固有の土地所有慣行が存在し、その上で独自の漁場利用の仕組みが形成され、震災前から生業が持続されてきた。震災後の復興過程では、土地の再整備や、道具の支援などの復興支援事業が行われ、生業の再開に至った。さらに、生産者らが主体となり新しい取り組みを模索しながら生業の継続が図られている。また、生産者らによる生業に対する評価を捉えたところ、道具の支援の受用、漁場環境の回復、生業の魅力の再発見が生業の再開・継続への動機となっていた。その上で、生産者らが描く今後の生業の持続に向けた生産方法として、生産形態の更新、環境価値の向上、就業体制の踏襲の3つの傾向があり、これらはそれぞれ社会・経済、風土・地域、歴史・慣習を背景に含意していると考えられる。生産者はそれぞれ多様な方法を模索しており、その背景を丁寧に読み解きながら、災害復興を進めていくことが重要であると考えられる。

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