2015 年 50 巻 3 号 p. 1004-1009
人口減少社会を迎える我が国において、生産年齢人口の減少に伴う税収の減少が、今後の自治体経営に大きな影響を与えるであろうことは、多くのところで指摘されている。このような厳しい財政状況の中、急増が見込まれる公共施設の維持・更新費用をいかに捻出するかも、中長期での課題となっている。多くの地方自治体では現在保有する全ての公共施設を維持することは難しく、大幅な施設削減が必要とされる。一方で公共施設の削減による行政サービス水準低下への懸念もあり、実際は施設削減の実施まで進まないケースも多く見られる。そこで本研究は、地域で求められる行政サービス水準を維持しながら、施設更新費の削減を実現する公共施設削減のあり方を明らかにすることを目的とする。具体的には、必要とされる公共施設削減の方向性とそのあり方を把握し、条件の異なる複数シナリオから、施設削減手法の違いが行政サービスと行財政に与える効果を評価するものである。本研究の成果が、今後の人口減少下の施設削減計画立案での一助となることが望まれる。