本研究の目的は、近年、地方自治体において普及しつつある「建築物環境配慮計画書」制度の実効性の分析することである。そのため、行政法学視点に基づき、15団体の条例の法的構造について分析し、また、6団体の政策担当者への訪問ヒアリングおよび21団体を対象としたアンケート調査を行った。主な結果は以下の通りである。1)届出義務以外に、建築主の取るべき措置に関する明確な実体的義務規定はなく、届出義務の不履行に対する制裁措置も「勧告+公表」に止まっていることから、本制度の規制力は必ずしも高いものではない。2)届出率に関しては、未把握、あるいは90%未満と答えた自治体は11団体であり、また、基準適合率の向上策に関しては、何ら対策も講じていない団体は9団体もあることが分かった。3)いくつかの団体では、届出率や基準適合率の向上策として、建築物計画書制度と建築基準法における建築許認可制度とをリンクさせる手法や、建築物環境性能表示制度(ラベリング制度)が導入されており、一定範囲において制度の実効性を向上させることが可能ではあることが分かった。