本研究は、先進事例である英国において地域振興のためにミュージアム活動を通して地域遺産を活かす管理運営の仕組みと経営方法を明らかにすることを目的とする。事例研究としてアイアンブリッジ渓谷ミュージアムとテルフォード開発公社、民間非営利組織との関係について議論する。調査はアイアンブリッジ渓谷ミュージアム・トラスト職員と地方公共団体職員に対して聴取りを行った。結論として1)ミュージアムにより引き出された地域遺産の価値付けが、地元住民のアイデンティティや新たな共有意識を高める働きを持っている。2)ミュージアムは、地域社会の課題に寄与する新しいコミュニティや地方公共団体との協働関係を創り出す仕組みである。3)ミュージアムが地域社会への貢献と事業とのバランスを保つためには、一つの財源に依存しないことで安定した経営を可能にすることがわかった。以上のことから日本の地方都市においてミュージアム活動によるエリアマネジメントを展開するためにはNPOを中心とした民間組織を設立し、市民団体が活動に参加できる仕組みや、経営面で企業からの寄付金を得られる制度を設けることが必要である。