2007 年 42.3 巻 p. 697-702
本研究は日常安全性に配慮した計画的戸建住宅地2事例を対象にアンケートやワークショップ(以下「WS」)を実施し、住民の評価を調べるとともに、調査で明らかにする交通安全上及び防犯上の課題について、共通する解決の方向性を見出すことを目的とする。交通安全性に配慮した設計が行われた青葉台地区では、交通安全性に対する住民の評価も比較的高く、人的要因による危険の指摘や、対歩行者・自転車の危険の指摘が少ないことが分かった。防犯設備を取り入れた十王地区では、その効果に対する期待が大きく、地域の防犯性が高いと評価する住民が非常に多いことが分かった。課題への対策のうち両分野の接点と言えるのは、交通分野における「進入の抑制」と、防犯分野における「領域性の確保」である。スムース横断歩道、ゲート、サインなどは、住民の犯罪不安を緩和するとともに、犯罪企図者等の接近を心理的に抑制することが期待される。この点は、日常安全性に配慮した住宅地の目指す方向性のひとつと言える。