2006 年 41.3 巻 p. 13-18
本研究は,富士五湖地域を取上げ,観光客の情報利用と周遊行動のデータを用い,それらの因果構造について仮説を設けて仮説検証を行った.まず,周遊行動中における情報利用の程度は空間特性といえる訪問エリアと共に,周遊行動開始時刻,帰宅行動開始時刻,地域内の総滞在時間といった時間特性などへ肯定的な影響を与えている因果構造が明らかになった.次に,観光客の属性と旅行形態などの変数は地域認知度に直接影響を与え,その一方で情報利用と周遊行動には地域認知度を介して間接的に影響を与えていることがわかった.またこれらの結果から,既存の周遊行動のモデルの同定化に対しては,観光客の情報利用そのものをダミー変数などで考慮する枠組みではなく,スケジュール段階で情報利用に対する地域認知水準と周遊行動中に利用する情報利用程度を定量化する必要性が確認できた.