本稿では,交通網を分析するための新しい指標として,道路距離と直線距離の差を提案する.都市内の様々な移動に対する差の値の分布は,直線距離からの逸脱度合いが都市内でどのように分布するのかを記述し,特定パターンの交通網がもつ特性を分析するための有向な道具になるものと考えられる.また近年,環境問題への対応が急務であるという認識が高まっており,移動に伴うエネルギー消費を議論するための基礎モデルの開発は重要な意味をもつ.直線距離との差の分布は,最も理想的に移動できる状態からの移動エネルギー消費の増分の都市内分布を記述する重要な指標と考えられる.本稿では,格子状網を有する二つの正方形都市モデルを用い,差の分布の導出手順を詳細に述べ,起・終点が一様に分布する場合についてこれを具体的に導出する.