本研究は、まちなみ観光地として発展を遂げてきた岐阜県高山市において、地域紙「高山市民時報」の記事から読み取れる住民の意見の変遷を、同市におけるまちづくりの展開ならびに観光の発展と比較しながら論じたものである。分析の結果、高山では、まちづくりという側面においては、行政の施策と住民の意識とが比較的合致しており、そのことが結果的に「古い町並み」を核とする観光地としての発展に結びついたと考えられる。他方、観光という側面においては両者とも一貫性に乏しく、観光地としての発展やその方向性に関して対立する構図がみられた。また、近年においては、高山が観光への依存度を高めてきたことによる地域社会のひずみが、住民の意見としても現われている。