環境科学会誌
Online ISSN : 1884-5029
Print ISSN : 0915-0048
ISSN-L : 0915-0048
安定同位体を利用した河川浄化機能の評価
新井 秀子田瀬 則雄
著者情報
ジャーナル フリー

1992 年 5 巻 4 号 p. 249-258

詳細
抄録

 下水処理水が放流され,表流水の出入がなく,自然状態に近い水路である玉川上水で,窒素安定同位体自然存在比(δ15N値)と可溶性塩類濃度を測定し,流下に伴う変化から自浄作用の評価を試みた。10時間の流下過程で,NH4+とNO2-の濃度は減少し,NO3-の濃度は増大した。一方,総無機態窒素の負荷量の減少,NO3-Nと総無機態窒素のδ15N値の増大,アルカリ度(HCO3-)の増大がみられたことから,硝化と脱窒の両者が起こっていることが示唆された。δ15N値は,物質の濃度(負荷量)の変化に加えて,河川の自浄作用を直接評価する有効な手段と考えられる。

著者関連情報
© 環境科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top