環境科学会誌
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大気汚染対策の便益移転と環境会計
大床 太郎國部 克彦竹内 憲司
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2007 年 20 巻 1 号 p. 7-20

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抄録

 表明選好アプローチによる環境評価手法のひとつである選択型コンジョイント分析を用いて,NOx・PM対策に関する市民の選好を調べ,その社会的効果を貨幣評価した。評価にあたっては,分譲マンションの購入という状況を設定した。住宅は日常的に市場で取引されている財であり,回答者はこれを過去に購入した経験を持っている人を対象としているので,アンケートで仮想的に想定されている状況を理解しやすいというメリットがある。 神戸及び横浜の周辺地域において,訪問面接形式のアンケート調査を行い,収集データを条件付ロジットモデルで分析した。その結果NO2・SPM汚染を1ランク改善するための限界支払意思額は,住民の個人属性を反映させないシンプルモデルで191万円から215万円(年価値化すると6万6,000円から7万4,000円)となった。また,個人属性を反映させたフルモデルを用い,限界支払意思額を調整した上で便益関数移転を行うと,シンプルモデルによる便益移転よりもパーセント誤差が少なくなる傾向が確認された。 さらに,分析で得られた便益移転関数を用いて環境会計への応用を試み,企業によるNO2削減取り組みの効果を費用と比較した。東京都全体での2002年の便益は6億1978万円であり,取り組みに要した費用を大きく上回っていた。

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