森林生態系に流入してきた降水は,樹冠部で遮断成分,樹冠通過雨および樹幹流に分かれる。後者の2つの成分は林床に達した後,土壌を通過し,いずれは流出水として系外に出ていく。この間に量的・質的な変化を受ける。日本の国土の6~7割は森林であるので系内での変化が,下流の河川・湖沼・海の水質に与える影響は大きい。本稿では降水量配分とそれぞれの媒体中での物質量,とくに環境汚染物質について言及した。pHは降水に比べて樹冠通過雨および樹幹流でいずれも低くなるが流出水ではほぼ中性になる。この効果は森林形成の有無によって異なることを明らかにした。また降水に含まれる重金属元素やBHCなども森林によって浄化されていることを示した。