理学療法の歩み
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症例報告
ステップロック式膝装具の使用経験
―多発性脳梗塞患者の下肢屈曲拘縮に対するアプローチ―
金田 妙子遠藤 伸也遠藤 しおみ熊谷 一美丹野 寛子駒場 滋郎小濱 優子斉藤 暁子
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2005 年 16 巻 1 号 p. 19-24

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抄録

 多発性脳梗塞により,徐々に能力障害が進行し,著明な膝関節屈曲拘縮をきたした症例に対し,両下肢へステップロック式膝装具の使用を試み,下肢機能の改善,日常生活活動(以下,ADL)の能力向上を図った。ステップロック式膝継手は,ラチェット機構を備え,完全伸展までに9段階で自動ロックされる仕組みを持っている。膝装具は,下肢の持続的伸張運動と起立・歩行練習に使用した。その結果,下肢屈曲拘縮の改善,下肢筋力強化を図ることができ,起立・歩行能力が向上した。病棟では,移乗・トイレ動作などが自立し,車椅子使用でのADL能力が向上した。理学療法室では両側膝装具着用でのピックアップ型歩行器歩行が監視で可能となった。しかし,両側膝装具着用では立位から座位になる動作が行ないにくかったこと,歩行能力が十分ではなかったこと,症例の装具に対する受け入れが不十分であったことなどの問題により,病棟生活に歩行を取り入れることが困難であった。退院後は,自主練習としてステップロック式膝装具着用での下肢伸張運動や起立練習を継続するよう指導した。また,退院にあたっては,ベッドやポータブルトイレを用意し,日常生活での起立の機会を確保することにより身体機能維持を図るよう指導した。以上の経過より,ステップロック式膝装具を使用したアプローチが下肢機能改善,ADL能力向上のための有効な一手段と考えられた。

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© 2005 宮城県理学療法士会
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