皮膚
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透析患者に見られる蚤痒の臨床統計学的観察
浦上 芳達小野 利彦馬杉 好
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1983 年 25 巻 6 号 p. 939-945

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抄録

透析患者の瘋痒発生機序を検討する目的で, 京都第一赤十字病院人工透析室並びに馬杉医院にて透析中の患者169名について, 臨床統計学的に観察して次の結果を得た。
(1) 人工透析患者の82%に瘋痒を認めた。この瘋痒は性別には関係なく, 年令的には比較的若い年令層から認められ, 腎不全疾患の種類には関係がなかった。(2) 透析前に瘋痒のなかった腎不全患者でも透析によって瘋痒が出現することが多く, その大半は透析開始1年以内に見られた。反対に透析を行う前に瘋痒のあった患者が透析を行うことによって瘋痒が消失した症例は極く僅かであった。以上の事実からすれば, 腎不全患者が体液清浄化のために行う透析は瘋痒軽快には役立たず, 逆に瘋痒を引き出している様に思われる。(3) 瘋痒のある透析患者が透析を行った直後に瘋痒が如何に変化するかを検討した結果, 瘋痒が軽快又は消失した症例は皆無であった。(4) 透析中の患者は瘋痒と乾皮症を合併していることが多い。しかし, 乾皮症が先行して瘋痒が続発することは極めて稀である。(5) 透析瘋痒患者と透析非瘋痒患者の血中尿素N濃度, Na濃度, K濃度, Cl濃度は両者の間に差異を認めなかった。
以上の事実を総括すれば, 透析患者の瘋痒は腎不全のために代謝産物が体内に貯留すると考えるよりも, 透析を行うことによって体内から未知の物質が消失するためと考えた方が妥当の様に思われる。

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© 日本皮膚科学会大阪地方会
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