耳鼻と臨床
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[内耳臨床]人工内耳術後の顔面神経刺激症例の検討
坪井 康浩東野 哲也牛迫 泰明森満 保
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1996 年 42 巻 5Supplement2 号 p. 717-725

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抄録

1995年5月までに宮崎医科大学耳鼻咽喉科にて行われた人工内耳手術は25例26耳であり, このうち2耳において顔面神経迷路部に近接する電極で顔面神経刺激が誘発された. 第1症例の原因は聴神経腫瘍による骨破壊や手術による骨削開で蝸牛骨包と顔面神経管の間の骨隔壁が脆弱となり漏電が生じたものと思われた. また第2症例では内耳梅毒に伴う骨病変のため迷路骨包の導電性が変化したためと考えられた. 術前のCTで, 迷路骨包と顔面神経管を境する骨が不明瞭であつたり, 迷路骨包の骨に病的所見を認める症例では顔面神経刺激誘発の可能性を考慮しておく必要がある. 本合併症に対して現時点では該当するチャンネルを不活性にするしか方策はないが, 電極の構造的な改良やマッピングの工夫とともに症例によつては蝸牛と顔面神経との間に手術的に絶縁体挿入の策も考慮すべきと考えた.

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