1993 年 39 巻 5 号 p. 676-680
舌根部clear cell tumorを認めた65歳, 男性について報告した. 全身麻酔下に頸部からの外切開法により腫瘍を摘出した. 病理組織学的には, 明細胞が充実性ないし巣状に増殖するmonomorphic variantを示し, 一部では筋層への浸潤像を認めた. 術後経過は良好で, 術後1年を経過したが現在のところ再発や転移などの所見は認めていない.
Clear cell tumorはまれな腫瘍であるが, 耳下腺, 顎下腺, 口蓋においては幾つかの報告がある-しかし著者らの検索した範囲では, 舌根部小唾液腺より発生した例は他になかつた.
Clear cell tumorは局所的に浸潤性発育を示したり, 再発や転移などをきたすことがあることより, 生物学的には低悪性度群の腫瘍であると考えられる.