トレーニング科学
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実践研究
短距離選手における股関節屈筋群の筋サイズと関節トルク,速度の関係
バレーボール選手との比較検討
星川 佳広飯田 朝美村松 正隆井伊 希美中嶋 由晴
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2010 年 22 巻 4 号 p. 367-378

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抄録

短距離選手における股関節屈筋群(大腰筋,大腿直筋)の筋形態と機能の関係を調べるため,各筋断面積と股関節屈曲トルク,角速度を測定し,相関関係を調べた.被検者は女子 24名,男子 25名の短距離選手と,比較対象としてのバレーボール選手(女 27名,男 37名)および非トレーニング群(男女各 10名)であった.被検者の最大屈曲トルクは等速性筋力装置(Biodex System 3)により角速度 3.14rad/秒で測定し,最大の屈曲角速度指数はバリスティックマスター(コンビ社)による膝振り上げ速度を大腿骨長で除すことで求めた.各筋断面積は MRI 法でもとめた.短距離選手では,大腰筋サイズ(筋断面積×身長)は屈曲トルクと弱く有意に相関(女 r =0.48,男 r =0.34)したが,大腿直筋サイズは有意な相関関係がなく,両筋サイズは股関節屈曲トルクや角速度を決定する強い要因ではなかった.全被検者を対象にした場合,男女ともに屈曲トルクと大腿直筋,大腰筋サイズにはいずれも中程度の有意な相関関係があり,また大腰筋サイズは屈曲角速度指数とも弱いが有意な相関関係があった.短距離選手とバレーボール選手を比較した場合,絶対値,体格補正値にかかわらず,大腿直筋断面積に有意差がなく,大腰筋断面積は短距離選手がバレーボール選手より有意に大きかった.屈曲トルクはバレーボール選手が短距離選手より有意に大きかったが,屈曲角速度指数は短距離選手がバレーボール選手より有意に大きかった.短距離選手に見られる顕著な大腰筋発育は角速度向上に有利で,スプリントパフォーマンスに対して合理的な適応であると考えられた.

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© 2010 日本トレーニング科学会
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