2002 年 57 巻 10 号 p. 738-745
1991年8月に日英米国際協力プロジェクトとして宇宙科学研究所より打ち上げられた太陽X線観測衛星「ようこう」は,2001年12月に至るまで10年間以上にわたる太陽のX線・γ線観測に成功した.この期間は,ほぼ太陽周期活動1周期分に相当するもので,「ようこう」は太陽のコロナが非常にダイナミックであることを示し,太陽フレアのエネルギー解放機構が,磁気再結合(リコネクション)によるものであることを明らかにした.マイクロフレアやX線ジェット,コロナ質量放出(CME)をはじめとする様々な太陽コロナ活動が,磁気再結合過程として統一的に捉えられ,コロナ加熱機構にも,磁気再結合が深く関係している可能性を示唆した.「ようこう」の観測は,太陽物理学に留まらない多くの関連研究分野をも刺激し,次期太陽観測衛星「Solar-B」の打ち上げも,多くが期待されるところとなっている.