Japanese Journal of Endourology and Robotics
Online ISSN : 2436-875X
特集4 : これから始めるTarget biopsy―Focal therapy
序文
浮村 理藤井 靖久
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2022 年 35 巻 1 号 p. 73

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抄録

 近年の前立腺MRIのmulti-parametric撮影技術の進歩に加えて, PI-RADSカテゴリーによるClinically significant cancerの存在可能性の定量的評価の標準化が進んでいる. すなわち, 即時治療が必要な前立腺癌病巣の可視化が, 一定の信頼度をもって可能となり, 可視化された癌疑い病変に対する標的化生検 (target biopsy) を実施すれば, 組織学的悪性度 (Gleason score) の治療前診断精度が向上し, さらに, 標的化生検により採取し得る癌組織の広がり (癌長) の情報と, 画像で可視化された癌病変の広がり (直径) との相関性も向上した. 従来の系統的採取を標準としていた前立腺針生検法では, サンプリングエラーにより, 麻酔を要し感染の危険もある検査が繰り返される, あるいは, 採取数を極端に増加させて実施される危険があったという欠点・課題の解決法として, 新たな方向性として, 針生検前にmulti-parametric-MRIを実施して, Clinically significant cancerの存在可能性を評価し, 従来の系統的生検 (systematic biopsy) と標的化生検 (target biopsy) との組み合わせを実施することが, 今後のあるべき姿となったと言っても過言ではない. Clinically significant cancerの局在が, 画像所見および組織学的に確認できると, 「可視化された即時治療が必要な限局性癌病巣が存在し, なおかつ, 他の部位には, 即時治療が必要な癌病巣が系統的生検で否定的な場合」には, その可視化されたClinically significant cancer (とその周辺) だけを標的化する新たな治療選択肢を, 科学的根拠に従って支持することに成った. 侵襲的な臓器全体を治療対象とする従来の侵襲的治療による有害事象を回避して, 低侵襲に癌病巣だけを治療することで, 臓器温存・機能温存を果たし, 「癌制御」と「機能温存」の両立を目標とする新たな前立腺癌治療の選択肢として, Focal Therapyが提唱され, その臨床的検証が進んでいる. 本稿では, 新しい前立腺針生検のあり方としてのTarget biopsyと, その診断に基づくFocal Therapyという新たな前立腺癌治療の選択肢の今を紹介し, これから始める読者にその方向性を示したい.

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© 2022 一般社団法人 日本泌尿器内視鏡・ロボティクス学会
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