大気環境学会誌
Online ISSN : 2185-4335
Print ISSN : 1341-4178
ISSN-L : 1341-4178
研究論文(原著論文)
バイオマス燃焼を排出源とするPM2.5一次粒子の有機成分について
市川 有二郎 内藤 季和
著者情報
ジャーナル フリー

2019 年 54 巻 4 号 p. 161-177

詳細
抄録

本研究はバイオマス燃焼を排出源とするPM2.5一次粒子中の有機成分を解析し、PM2.5低減化対策を講じるための新たな知見の集積を目的として行った。サンプルは、9軒の農家の協力のもとに実施した屋外実験と14種の異なる植物片を用いたチャンバー実験で採取した。対象とした有機成分は、ジカルボン酸類、無水糖類、メトキシフェノール類、脂肪酸類、グリセリド類、フィトステロール類、多環芳香族炭化水素類、n-アルカン類であり、計63種を解析した。レボグルコサンを含む無水糖類がすべての排出源で相対的に高い割合で排出され、燃料種別の排出割合は、木質系>非木質系の傾向であった。さらに、無水糖類の二成分比法による排出源の解析で、レボグルコサン/マンノサン比は非木質系>硬木>軟木の傾向で、マンノサン/ガラクトサン比は軟木>硬木>非木質系という特徴的な傾向を示した。メトキシフェノール類は木質系の排出源で、脂肪酸類は農作物を燃料とした排出源でそれぞれ高い排出割合を示したことから、これらは有用な指標成分になると考えられた。フィトステロール類とn-アルカン類の排出割合については、非木質系>木質系という特徴的な傾向が示された。排出源の推定を行うためには、複数の指標を組み合わせて解析することが重要と考える。

著者関連情報
© 2019 大気環境学会
前の記事 次の記事
feedback
Top