接着歯学
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新規1ボトル1ステップ型ボンディング材 (Bond Force TR) の歯質接合界面のSEM・TEM観察
森上 誠杉崎 順平宇野 滋山田 敏元
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2008 年 26 巻 1 号 p. 1-7

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抄録

近年, レジンボンディングシステムは操作を短縮するために簡略化されてきている. 1ボトル1ステップ型レジンボンディング材Bond ForceTR (以下Bond Force) が, トクヤマデンタルにより開発された. 本研究の目的は, BondForceと歯質との接合界面をSEMおよびTEMにより観察し, 併せてウシ前歯に対する引張り接着強さ (TBS) と, ヒト歯に対する微小引張り接着強さ (μTBS) を測定し, Clearfil Mega Bondを比較対照としてBond Forceの歯質接着性能について検討することである. 接合界面のSEM観察には, ヒト歯エナメル質, 健全象牙質 (ID) およびう蝕除去後の象牙質 (CAD) が用いられ, TEM観察にはヒト歯健全象牙質 (ID) が用いられた. 健全なヒト新鮮抜去大臼歯の歯冠中央部を歯軸に垂直に切断し, #1,000耐水シリコンカーバイドペーパーで研削した面をエナメル質および健全象牙質の被着面とした. さらに, 象牙質う蝕を有するヒト新鮮抜去大臼歯に対して, う蝕検知液をガイドとしてスチールラウンドバーを用いてう蝕象牙質第一層を除去した面をう蝕除去後の象牙質 (CAD) の被着面とした. SEM観察では, Bond Forceとエナメル質, 健全象牙質およびCADの接合界面にはギャップ形成は認められず, ハイブリッド層と思われる層は認められなかった. TEM観察では, 象牙質表層に200~300nmの幅の界面構造が認められ, ナノレベルの接着機構が生じているものと推測された. ウシ前歯に対するTBS (SD) は, エナメル質に対して21.9 (3.6) MPa, 象牙質に対して23.3 (2.5) MPaであり, ヒト歯象牙質に対するμTBSは50.0 (9.8) MPaであり, 49.4 (10.0) MPaを示したClearfil Mega Bondとの間に統計学的有意差は認められなかった (p;0.05). 本ボンディング材は歯質に対する良好な接着性能を有しており, 臨床で使用するうえでも有望なボンディング材であることが示唆された.

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