肩関節
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治療法
鏡視下腱板修復術におけるエピネフリンとトラネキサム酸の有効性
梶原 大輔落合 信靖橋本 瑛子
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2023 年 47 巻 1 号 p. 208-212

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抄録

 鏡視下腱板修復術において,術中出血は視野の妨げとなり手術操作に影響する. 出血対策として低血圧麻酔やポンプシステムによる灌流圧調整の他に,エピネフリン(Epinephrine: 以下EPI)やトラネキサム酸(Tranexamic acid: 以下TXA)の使用が報告されている.本研究の目的は鏡視下腱板修復術に対するEPIおよびTXAの周術期の有効性を検討することである.鏡視下腱板修復術を受けた27例27肩(EPI群14肩,TXA群13肩,平均年齢63.1歳,男性13例,女性14例)を対象とした.EPI群は灌流液1袋3LにEPIを1mg混注し,TXA群は執刀10分前にTXA1gを静注した.検討項目は術野の明瞭度(15分ごとgrade 1: 不良からgrade 3: 明瞭),手術時間,術前後のヘモグロビンの変化量(以下ΔHb),有害事象を群間で比較した.両群の患者背景(男女比,年齢,患側,BMI,断裂サイズ)に有意差は認めなかった.EPI群の術野の明瞭度はTXA群に比べ有意に良好であり,grade 3の割合が有意に高かった(EPI群: 81.6%,TXA群72.5%).手術時間およびΔHbは有意差を認めなかった(EPI群: 151.1分,0.9 g/dL,TXA群: 151.5分,0.8 g/dL).有害事象は共に認められなかった.鏡視下腱板修復術においてEPIを灌流液に混注する方法は,手術時間とΔHb,有害事象に有意差は認めないものの,TXAを術前に静脈注射する方法と比べ,術野が有意に明瞭であった.

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© 2023 日本肩関節学会
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