2015 年 39 巻 2 号 p. 365-369
スーチャーアンカー法による肩腱板修復術では,母床を過剰に掘削すればアンカーの脱転を引き起こす危険性がある.われわれは掘削を行わず母床のドリリング処置により骨髄由来細胞が修復腱に移動したことを報告した.本研究では母床へのドリリングが腱骨接合部の組織学的修復に与える影響について検討した.ラットを用いて3群の腱板修復モデルを作製した.A群では棘上筋腱を大結節部から切離し,軟部組織を除去し修復した.B群では母床のドリリングを追加し,C群では海綿骨が露出するまで母床を掘削した.術後2, 4, 8週で腱骨接合部を評価した.B群では,他の2群と比較して多数の軟骨細胞浸潤を認めた.ドリリングは,腱骨間に作用する剪断力や圧迫力を緩和する役割をもつ線維軟骨層の再形成を促進した.母床のドリリングは,接合部を過剰に掘削することなくアンカーの固定性を保持したまま良好な組織修復が期待できるため,有用な手技と考える