2018 年 28 巻 2 号 p. 71-78
CTの臨床現場における有用性は明らかである。しかし、非常に細かい領域の診断、治療を必要とする耳科領域では描出能に限界を感じる場面があったことも事実である。このほど、空間分解能を従来よりも飛躍的に高めた超高精細CT が開発され、市販が開始された。同機は従来と比べ縦横方向に2倍の密度である0.25mm四方の検出画素と小焦点の照射線源を有し、画像は最大2048×2048ピクセルで表示される。本機の耳科領域における初期経験を報告する。本機では空間分解能が明らかに改善し、鼓索神経や耳小骨などの微細な構造物、中耳炎などの進展による細かな病的変化が明瞭に描出された。また部分体積効果の改善により、従来CTでは描出が苦手とされていた、軟部組織病変、骨に近接する病変の描出能なども改善した。膨大なデータを扱う機器や表示の環境などの整備が必要である問題点が挙げられた。