Otology Japan
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原著論文
鼓膜形成に際して複数枚の移植弁を使用した鼓室形成術症例に対する術後経過の検討
桝谷 将偉湯浅 有湯浅 涼
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2016 年 26 巻 5 号 p. 681-686

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抄録

当院では鼓室形成術に際し、主として鼓膜形成術接着法を応用した耳鏡内操作のみによる低侵襲性術式を施行している。だが、耳鏡内操作のみでは術野が狭いため外耳道弯曲症例や大穿孔症例において、一枚の大きな移植弁それ自体が視野や術操作の妨げとなる場合がある。その際、比較的小さな移植弁を複数枚使用し処置部位を明視下に置く事で、より確実な術操作を行うことが可能となる。今回我々は、2011年1月から2013年12月に当院で施行された鼓室形成術Ⅰ型症例613耳における複数枚の移植弁使用症例、および一枚の移植弁使用症例間の術後鼓膜穿孔閉鎖率と術後聴力を比較検討した。その結果、大穿孔症例における穿孔閉鎖率が、一枚移植弁使用例に比し複数枚使用症例において有意に高かった。また移植弁の枚数による術後聴力の差は認めなかった。耳鏡内での大穿孔に対する穿孔閉鎖の際には、複数枚移植弁使用による明視下での確実な術操作が有用であることが示唆された。

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© 2016 日本耳科学会
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