Otology Japan
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原著論文
慢性中耳炎に対する鼓室形成術の術後成績の検討
鎌倉 武史梶川 泰松代 直樹古川 雅史北村 貴裕大畠 和也奥村 新一
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2011 年 21 巻 3 号 p. 203-206

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抄録

平成17年4月から平成22年3月までの5年間に大阪労災病院耳鼻咽喉科にて鼓室形成術を施行した慢性中耳炎症例について術後成績を検討した。対象症例は122例137耳であった。全体の聴力改善率は82.5%(113耳/137耳)、穿孔閉鎖率は97.1%(133耳/137耳)であった。鼓膜穿孔の大きさで対象症例を分類するとGrade I(鼓膜穿孔の大きさが緊張部の25%以内)は7耳、Grade II(同50%以内)は31耳、Grade III(同75%以内)55耳、Grade IV(同75%以上)44耳で、それぞれの聴力改善率/穿孔閉鎖率はGrade Iが100.0%/100.0%、Grade IIが87.1%/100.0%、Grade IIIが80.0%/94.5%、Grade IVが79.5%/97.7%で、聴力改善率、穿孔閉鎖率ともに穿孔の大きさによって有意差は見られなかった(χ2検定)。聴力不改善例は24耳で、うち12耳は肉芽や固着などによる耳小骨連鎖の可動性不良が聴力不改善の原因と考えられた。
穿孔閉鎖率は良好な成績であったと考えるが、聴力改善率は改善の余地があると考えられ、今までは最小限のみとしていた耳小骨連鎖への操作が今後の課題と考えられた。

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