心臓
Online ISSN : 2186-3016
Print ISSN : 0586-4488
ISSN-L : 0586-4488
症例 心房解離の1剖検例
岡島 智志竹内 省三石川 宏靖外畑 厳岡田 了三
著者情報
ジャーナル フリー

1976 年 8 巻 10 号 p. 1061-1066

詳細
抄録

心房解離は極めて稀とされる.我々は脳卒中発症後うっ血性心不全を来たし,死亡した64歳男子に.一過性心房解離を認めたので報告する.死亡14日前の心電図では,2種類の互いに独立した心房波がみられた.第1の心房波(P波)は頻度81/分一定PQ間隔(0 .22秒)でQRS波に先行,以前に記録した心電図の洞性P波形と類似し,洞起源と考えられた.第2の心房波(P波)は頻度100/分(P'-P'間隔0.58・0.61秒)で,その起源は左房褒上部と推測された.P'波を生じた刺激は心室へ伝導されず,また両心房調律間には相互干渉は認められなかった.このような所見より,この不整脈を心房解離と診断した.
心臓病理所見では,Bachmann東およびcoronarysinus bundleに中等度ないし高度の線維化が認められた.これら心房間伝導路の線維性杜絶により,右房から左房への刺激伝導が杜絶したため,心房解離が生じたと考えられた.

著者関連情報
© 公益財団法人 日本心臓財団
前の記事 次の記事
feedback
Top