【症例】42歳の男性.【家族歴】父親とその兄弟全員(4人)にpacemakerが植え込まれている(病名不詳).父親は65歳時に癌で死亡.その他の3人は30代で原因不詳の突然死をしている.
【経過】36歳時に心房粗・細動,房室ブロックで紹介来院された.この時点では,明らかな心機能異常は認められず,心房粗・細動に対してアブレーションを施行し,DDDモードのpacemaker(心室leadは心尖部に留置)を植え込んだ.その1年後に心不全を発症し,入院となった.心臓超音波で左心室のび漫性に壁運動が低下していたが,冠動脈造影は正常であった.心筋生検ではFabry病が疑われたが,α galactosidase Aは16.4nmol/mLでむしろ高値であり,臨床検査上,確定診断には至らず,また,他の代謝性心疾患も否定的であった.以後,外来通院していたが,急速に心機能が低下し駆出率30%まで低下,心電図ではQRS幅が増大し,心不全のため入退院を繰り返していた.今回,心臓再同期療法目的で入院となったが,入院中に心室細動を発症し,脳死状態となり救命できなかった.剖検では心Fabry病と診断された.突然死の家族歴を有し,急速に進行する原因不明の心機能低下に対し,より早急に対処する必要があったと考えられた症例であり,病理結果も含めて報告する.