心臓
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HEART's Original [症例] 右室流出路狭窄を伴った非破裂右バルサルバ洞動脈瘤の1手術例
緑川 博文菅野 恵石川 和徳永沼 和香子小野 正博
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2008 年 40 巻 7 号 p. 637-641

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抄録

バルサルバ洞動脈瘤は比較的稀な疾患である.今回われわれは右室流出路狭窄をきたした非破裂巨大右バルサルバ洞動脈瘤の1手術例を経験したので報告する.症例は59歳,男性,息切れおよび貧血を主訴に来院した.精査の結果,横行結腸癌および中等度大動脈弁閉鎖不全,右室流出路狭窄を伴う最大径80mmの巨大右バルサルバ洞動脈瘤が認められた.横行結腸癌は出血を伴う進行癌であったため,まず2007年6月中旬横行結腸切除術が施行された.その後再発所見なく,息切れなど心不全症状が続き,2007年11月初旬動脈瘤に対する手術を施行した.バルサルバ洞入口部は約4cmと大きく,バルサルバ洞動脈瘤と右室流出路は著明に癒着していた.弁付きグラフトによる基部置換術を施行,左冠動脈は癒着剥離を回避するためにPiehler法による再建,右冠動脈はCarrel patchによる再建を行った.大動脈遮断時間126分,体外循環時間170分,手術時間296分であった.術後経過は良好で,術翌日人工呼吸離脱,術後2週におけるMDCT所見にて良好な結果であり,術後19日に退院した.右室流出路狭窄をきたした非破裂巨大右バルサルバ洞動脈瘤に対し基部置換術を施行し良好な結果を得たので報告した.

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