2008 年 40 巻 10 号 p. 855-860
症例は66歳,男性.2002年5月に右冠動脈#1から#3へ留置された,ベアメタルステントにより繰り返すステント内再狭窄に対し,2006年10月にCypherTMステントを用いて#1から#2を治療した.2007年5月下旬ころから,労作時の胸部圧迫感を自覚するようになり, 2007年6月に確認造影を実施した. 右冠動脈#1, #2 のCypherTMステント内に再狭窄を認めたため,引き続き経皮的冠動脈インターベンション(percutaneous coronary intervention;PCI)を実施し,cutting balloonTM(CBTM)にてステント内を拡張した.その直後に右冠動脈へ急性冠閉塞が生じ,高度な胸部圧迫感が出現した.硝酸イソソルビド,ニコランジルの冠動脈内投与ではそれらの改善は認められなかった.血流が右冠動脈#3のステント遠位部で制限されており,同部位へMicrodriverTMステントを留置し,血流は改善が認められ,症状も消失した.しかしながらステント内にフラップ様の透亮像を認めたため,血栓吸引カテーテルにて吸引実施し,透亮像は消失し,肉眼的に白色の泡沫状物質を吸引し得た.以上の経過から,CBTMによりステント内の新生内膜が剥離され,塞栓となり,急性冠閉塞をきたした可能性が考えられた.