心臓
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第3回不整脈薬物治療フォーラム アセチルコリン負荷冠攣縮誘発時,心室細動が惹起されたBrugada症候群の1例
笠尾 昌史吉良 文孝新田 宗也野崎 みほ白井 徹郎
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2006 年 38 巻 9 号 p. 969-972

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抄録

症例は57歳男性.10年前にpre-syncopal attackがある他に既往はなく,突然死の家族歴もない.2005年11月上旬から,朝方を中心とした安静時胸痛を何度か自覚したため,当院外来を受診.症状から冠攣縮性狭心症(VSA)を疑われ,精査を目的に入院となった.入院後の冠動脈造影検査では左右冠動脈に有意狭窄を認めず,アセチルコリン(Ach)負荷を施行した.Achを右冠動脈内に投与したところ,入口部に99%狭窄が生じ,下壁誘導でT波の陰転化を認めたため,冠攣縮の解除を目的に硝酸イソソルビド(ISDN),ニコランジルの冠動脈内投与を行った.薬剤投与により攣縮は解除されたが,その回復過程で右側前胸部誘導にてcoved型ST変化が誘発されるとともに心室細動(VF)が生じ,その停止には直流通電を必要とした.安静時胸痛の原因はVSAと診断したが,VF発生直前に認められた特徴的な心電図変化から,VFの発生機序としてBrugada症候群の関与を疑った.Brugada症候群に関する精査を目的としてピルジカイニド負荷試験を施行したところ,薬物負荷後に右側前胸部誘導でcoved型ST変化が生じ,薬物負荷陽性と判断した.さらに後日,電気生理学的検査を施行したところ,右室からのプログラム電気刺激にてVFが誘発され,停止には直流通電を要した.本症例はVSAとBrugada症候群の合併例で,Ach負荷により冠攣縮が生じ,その寛解期にcoved型ST変化が誘発されるとともにVFが惹起され,その発生機序に興味が持たれた.

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