心臓
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HEART's Original [症例] 心筋炎に伴う部分的心房停止患者への残存心房筋のペーシングが心不全治療に有用であった1例
矢崎 義直三谷 治夫吉岡 綾子鴨井 祥郎山本 貴信世古 哲哉藤本 陽前原 晶子石綿 清雄山ロ 徹百村 伸一
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2006 年 38 巻 9 号 p. 925-929

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抄録

【症例】63歳,女性.
【主訴】下腿浮腫,ふらつき,息切れ.
【現病歴】2004年4月ころより下腿の浮腫と息切れ,ふらっきを自覚し症状が改善しないため他院入院となり,心不全の診断にて加療された.高度の三尖弁閉鎖不全と9.4秒の心停止を認めたため,精査目的にて当院転院となった.
【入院後経過】入院時心電図はP波を認めず心拍数40/分の徐脈性房室接合部性補充調律であった.心臓電気生理検査を施行したところ右房内の電位は三尖弁輪周囲などで0.1mVのわずかな電位が記録されるのみであった.Eiectroanatomicalmappingにより同定した残存している心房筋はペーシングが可能であり,心拍数を上昇させることにより心不全は軽快した.ペースメーカー移植後の心電図では60/分の規則的なP波を認め,electro-anatomical mappingでは心房電位の改善を認めた.電位振幅が最大の部位はペーシング部位であった.左室の心筋生検組織像では間質の線維化とリンパ球の浸潤を認め,心筋炎と矛盾しない組織像であった.
【結語】心房筋が特異的に障害される一過性の部分的心房停止を示した心筋炎の症例を経験した.心不全を合併する部分的心房停止において,3D electro-anatomical mappingを用いた詳細な心房マッピングにより,電位の残存する心房筋が同定できれば,同部位からのペーシングが心不全の改善に寄与することが示唆された.

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