2002 年 34 巻 Supplement3 号 p. 42
症例は58歳女性.主訴は意識障害.41歳時,右乳癌に対し右乳房全摘,放射線療法を施行.48歳時より右胸水出現.51歳時,心エコーで右室に隣接する腫瘤を指摘,経過観察となる.58歳,平成1 1 年1 1 月2 3 日意識障害を来し当科入院.心電図では完全房室ブロックとQT延長を認め,Torsades de pointes(Tdp)型VTが頻発していた.硫酸マグネシウムとイソプロテレノールの持続点滴を施行.心拍数を50/分以上に維持したところTdpは抑制され,意識は清明となった.エコー上7年前に比し,右室に隣接する腫瘤は増大し,右室流入路に突出し三尖弁輪部の狭窄を来していた.心臓外科にて腫瘤摘出を試みたが不可能で,ペースメーカー心筋電極のみ植込まれた.第116病日に右心不全増悪し死亡.剖検では,右室前壁から心膜にかけての高度線維化を認めるのみで腫瘍はなかった.放射線照射による晩発型障害としての心筋線維化,刺激伝導系の異常から致死的不整脈が出現した1例を報告する.