1999 年 31 巻 7 号 p. 513-522
症例は21歳,女性.主訴は動悸.12誘導心電図にて右室後中隔伝導路の存在が示唆される△波,ならびに発作性上室性頻拍(PSVT)を認め,臨床心臓電気生理学的検査による検討では房室結節を順行伝導し,副伝導路を逆行伝導する房室リエントリー性頻拍が示唆された.右側後中隔マッピングでは最短AV間隔60msecと至適部位を選択できず,左側後中隔マッピングではAV間隔35msecならびに連続波の出現があり,ここで高周波通電を施行したが,副伝導路の恒久的途絶は得られなかった.その後,冠静脈洞内単極誘導電位同時記録を指標にして,さらに詳細なマッピングを施行したところ,中心静脈分岐部の約12mm心室側でAV間隔40msec,A/V比約0.8,△波先行度12msec,単極電位がPQS型波形を認める部位が得られた.左冠動脈造影の冠静脈相を併用することにより,電極先端を中心静脈内の心臓側壁に安定した固定が得られるのを確認後,厳密な抵抗値モニタリング下の低エネルギー通電にて,急性期合併症なく副伝導路の恒久的遮断が可能であった.以後,現在まで12カ月間無投薬下にて頻拍発作の再発を認めていない.
本例のごとく,より心外膜側に存在する副伝導路であれば心内膜アプローチによる恒久的離断が困難な場合もあり,造影所見を併用しつつ中心静脈内アプローチによる恒久的離断も可能であることが示唆された.