心臓
Online ISSN : 2186-3016
Print ISSN : 0586-4488
ISSN-L : 0586-4488
症例 造影剤による冠攣縮を確認しえた1例
小島 諭大村 寛政峰田 自章田中 幹夫諏訪 哲住吉 正孝冨原 均中田 八洲郎
著者情報
ジャーナル フリー

1996 年 28 巻 8 号 p. 658-663

詳細
抄録

70歳男性.急性心筋梗塞のため,入院.造影剤iomeprolを用いて冠状動脈造影を行ったところ,右冠状動脈造影時には問題なかったが,左冠状動脈造影時,突然胸痛,血圧低下,呼吸停止,徐脈を呈するショック状態となり,造影を中止した.後日再度iomeprolを用いて冠状動脈造影を実施したところ,再び左冠状動脈造影中にショック状態となった.この時点で左冠状動脈前下行枝(seg.7)および回旋枝(seg.13)に攣縮による完全閉塞を認め,isosorbide dinitrateの冠状動脈内注入および昇圧剤により軽快した.造影剤による冠攣縮はまれで,造影により確認した報告は少なく,その機序も明確ではない.同一患者でも造影剤の種類によっては冠攣縮が起こらないことも報告されている.本例ではiomeprolにより冠攣縮をきたしたと考えられたが,過去にiopamidolで冠状動脈造影をした際は顔面の発赤が出現した程度で,ioverolによる腹部CTと腎盂造影では全く問題なかった点も興味深かった.

著者関連情報
© 公益財団法人 日本心臓財団
前の記事 次の記事
feedback
Top