心臓
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研究 左室拡張能に関する安静時および運動負荷時のドプラ指標:年齢,心拍数との関係
第2報:肥大型心筋症の小児例による検討
神谷 康隆大中 正光浜岡 建城尾内 善四郎
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1995 年 27 巻 3 号 p. 226-232

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抄録

【目的】肥大型心筋症(HCM)の小児に安静時(側臥位,坐位)と運動負荷時のドプラ心エコー法を行い,左室拡張障害検出のためのドプラ指標を検討した.【対象および方法】対象は7~18歳(平均13歳)のHCM13例(HCM群)である.方法は,安静時(側臥位,坐位)と坐位運動負荷時(目標心拍数100~120/min)にパルスドプラ法を用いて左室流入血流波形を記録し,各条件下の拡張早期血流・最高流速(E),心房収縮血流・最高流速(A),E/A,および(E/A)/RRを計測した.以上の結果を健康対照群と比較検討した.さらに対照群のEおよび(E/A)/RRの平均値±2SD以上を異常と判定し,HCM群での異常出現率を求めた.【結果】Eはすべての条件下でHCM群が対照群に比し有意に低値であった(p<0.05~0.01).Aはすべての条件下で有意差を認めなかった.E/Aはすべての条件下でHCM群が対照群に比し有意に低値であった(p<0,05~0.01).(E/A)/RRはすべての条件下でHCM群が対照群に比し有意に低値であった(p<0.01).HCM群におけるEの異常出現率は安静左側臥位8%(1/13),安静坐位23%(3/13),負荷時38%(5/13),(E/A)/RRの異常出現率は安静左側臥位23%(3/13),安静坐位46%(6/13),負荷時69%(9/13)であった.【結語】HCM群はすべての条件下でE,E/A,(E/A)/RRが有意に低値であった.Eおよび(E/A)/RRの異常出現率は安静左側臥位では低かったが,安静坐位,負荷時に増加し,特に(E/A)/RRの異常は高率(46%,69%)に認められた.この理由として,HCMでは左室relaxationの障害のため負荷に対するEの増加率が減少しており,その結果心拍数に対するE/A比が低下するものと考えられた.以上の結果より,(E/A)/RRは小児の左室拡張動態の評価,すなわち左室拡張障害の検出に有用な指標であると考えられた.

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