心臓
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症例 三尖弁閉鎖不全を合併した右肺動脈上行大動脈起始症の2例
小川 潔大塚 匠子加藤 克治簡 瑞祥橋本 和弘中村 譲松井 道彦浜田 朗生的場 雅子野中 善治
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1987 年 19 巻 5 号 p. 596-601

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抄録

症例1は生後47日の男児で,心断層エコー,心臓カテーテルおよび,心血管造影検査にて,右肺動脈上行大動脈起始症,三尖弁閉鎖不全,心房中隔欠損および大動脈縮窄と診断した.生後3カ月時に,右肺動脈・主肺動脈直接端側吻合術を施行した.術後主肺動脈圧は正常化したが,術後1年で行った右室造影では,三尖弁閉鎖不全(Sellers3度)は依然持続しており,人工弁置換術を検討中である.
症例2は生後2カ月の男児で,入院時に著明な呼吸不全,心不全を認めた.心断層エコー,心臓カテーテルおよび,心血管造影検査にて,右肺動脈上行大動脈起始症と三尖弁閉鎖不全(Sellers 4度)と診断した.本症例は,入院後心不全が急速に進行し死亡した.
一側肺動脈上行大動脈起始症の本邦報告例について,生存例と死亡例を比較検討した.両者ともに,乳児期早期より高度の肺高血症を呈しており,特に差は認められなかった.三尖弁閉鎖不全の合併について比較すると,死亡例では明らかに合併頻度が高かった.三尖弁閉鎖不全を合併した10例は,ほとんどが4カ月以内に心不全症状が出現し,うち7例が死亡している.一側の肺動脈上行大動脈起始症に三尖弁閉鎖不全の合併はまれではなく,合併例では心不全が急速に進行し予後不良であり,早期診断,早期手術が望まれる.

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