心臓
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研究 ニトログリセリン軟膏の抗狭心症作用,特に局所冠血流増加作用について
201Tl心筋シンチグラフィーからの検討
若杉 茂俊柴田 宣彦長谷川 義尚中野 俊一
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1985 年 17 巻 12 号 p. 1233-1242

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抄録

心筋内濃度分布が局所冠血流分布を反映するとされている201Tlを用いて,26例の狭心症患者に運動負荷心筋シンチグラフィーを施行し,ニトログリセリン軟膏(NGO)の抗狭心症作用とくに局所冠血流増加作用について臨床的検討を行った.その結果,NGOに対する反応は,(1)虚血部の201Tlのuptakeが増加してシンチグラム上の欠損が改善するもの,(2)虚血部のuptakeは増加しないが,シンチグラム上の欠損は改善するもの,(3)シンチグラム上,欠損の改善が認められないもの,の3つのtypeに分けられた.虚血部のuptakeが増加して欠損が改善するtypeでは,NGOにより冠動脈の拡張による局所冠血流量の増加が生じたものと考えられた.虚血部のuptakeが増加せず欠損が改善したtypeでは,後負荷の低下による心仕事量の減少が心筋血流分布の相対的な改善を生じたものと考えられた.シンチグラム上,欠損が改善しなかったtypeでは,コントロールの薬剤非投与時に対し,NGO投与後の計測値に有意の変動がみられなかった.しかし,このtypeでSTレベルが改善したもののみについて検討すると,前負荷の指標の代用としたpulmonaryuptakeがコントロールに比べ有意に減少を示した.これらのことは,狭心症発症の重要な因子となる冠動脈の反応性(スパズムないしは冠動脈tonusの亢進)の有無により,NGOの作用は冠動脈拡張による局所冠血量の増加が主体になる場合と,前負荷,後負荷軽減作用が主体になる場合があることを示すものであると考えられる.

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