心臓
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症例 Disopyramide静注薬による低血糖の1例
水谷 匡宏勝賀 瀬貴佐久間 研二
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1984 年 16 巻 12 号 p. 1281-1286

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抄録

disopyramide静注薬によると思われる低血糖発作の1例を経験した.症例は77歳女性.家族歴,既往歴に糖尿病はない.慢性腎不全,慢性心不全,貧血および慢性DICのため昭和58年11月21日当科に入院した.入院時息切れ,発作性夜間呼吸困難,全身の浮腫が出現していたが,入院第2日より人工透析を開始し約1週間でこれら症状は軽快した.またDICに対してはgabexate mesilate(FOY(R))の投与により臨床検査成績の改善を認めたが,入院第18日に起きた発作性心房細動の治療にdisopyramide静注薬を2日間にわたり総量680mg使用したところ,心電図上洞調律の回復を認めたものの,入院第20日の早朝より突然傾眠が出現し,血糖値を測定したところ18mg/dlであった. 直ちにブドウ糖投与を行い,意識は清明となった.disopyramideによる低血糖発作と考え投与を中止したところ,その後は低血糖発作を認めなかった.これまでdisopyramideによると思われる低血糖発作は経口薬によるものが報告されているが,静注薬によるものは今回の症例が本邦において最初と思われる.この静注薬は数年前より一般に使用可能となった抗不整脈薬であるが,経口薬以上に重篤な患者を対象に使用される場合が多いため,意識低下時には低血糖発作による可能性も考慮しながら注意深く使用しなければならないと考える.

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