心臓
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症例 外傷性後乳頭筋断裂による僧帽弁閉鎖不全症の1治験例
吉岡 信彦清水 明徳中津 高明湊 武河野 宏高須 伸治桑原 正知畑 隆登
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1983 年 15 巻 8 号 p. 915-920

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抄録

45歳男性,自衛隊員.生来健康で検診で異常を指摘されたことはなかった.昭和56年12月5日ハンドボールをしていて転倒, 前胸部を強打し胸部圧迫感, 呼吸困難生ずるため昭和57年1月20日当科に入院した.心尖部中心にLevine4/6度の全収縮期雑音があり,心エコー図で左室容量負荷, 後尖の細動と逸脱, 収縮期に左房内異常エコーを認めた. 肺動脈圧は42/14(平均26) mmHgで肺高血圧を認め,左室造影でSellers3度の僧帽弁逆流を認めた.Digitalis剤,利尿剤を投与するも症状増強するため4月8日開心術を施行した.後乳頭筋の先端部に1カ所断裂を認め, Ionescu-Shiley弁29mmで僧帽弁置換術を施行した.術後の経過は良好である.組織では断裂した乳頭筋全体が壊死状であったが,その他は異常を認めなかった.本症例は原因となる心疾患が特になく,外傷後急速に発症していることより外傷によるものであると考えられた.診断には心エコー図が有用であった.

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